「森の戦士ボノロン」という絵本をご存知でしょうか。これはあの「北斗の拳」の原哲夫さんがプロデュースした、オレンジ色の巨人「ボノロン」の活躍を描いた物語です。セブンイレブンなどで偶数月に数量限定で無料配布されている冊子「ポラメル」に掲載されており、アニメ化もされています。
子どもが小さいときには、この冊子がお店に並ぶのを心待ちにしてせっせと集めたものです。絵は美しく、物語は簡潔で心温まるものばかりなので、読み聞かせにとても重宝していました。
当時集めていたものは、ほとんど処分してしまい、いま手元に残っているのは数冊のみですが、中でも特に印象に残っている物語があります。それが2006年6月号に掲載された「幸せのタネの巻」です。
物語は、ある国の「ヤマン」という年老いた科学者と「ボノロン」との出会いを描いたものです。「ヤマン」は若いころに様々な機械を発明し、人々に幸せを与え世界中から尊敬されている存在です。ただ、「ヤマン」が一番発明したかったものは、発明できずにいました。それは、「時を旅する乗り物」、亡くなったお母さんに会いに行くことができる乗り物です。「ヤマン」は自分が生まれた家の前の大きな菩提樹の下で涙を落とします。すると「ボノロン」が現れます。「ボノロン」は言います。巨木の年輪には過去の記憶がいっぱい詰まっていると。「時の年輪」にいけばお母さんに会えると。「ヤマン」の過去への旅が始まります。
この物語は、母親への愛情や人生の意味について考えさせられる感動的な話です。私は、読み聞かせをしている最中に不覚にも涙ぐんでしまい、途中で言葉が詰まってしまうことが何度もありました。他の絵本ではそのようなことはほとんどないのですが、この話だけは何度読み聞かせをしても胸に響いてしまい、涙を隠すのに必死だった記憶があります。
この冊子は古いものですが、いまはハードカバーのシリーズが手に入るようです。ぜひ手に取って読んでいただきたい一冊です。