Excelグラフは、データ分析やプレゼンテーションにおいて不可欠なツールです。しかし、多量のデータを扱う棒グラフにおいては、特定のカテゴリの識別が困難になるなど、視認性の課題に直面することも少なくありません。「この棒はどのグループに属するのか?」といった疑問は、情報の迅速な理解を妨げる一因となります。
本稿では、この課題を解決するためのアプローチ、Excel棒グラフのプロットエリアをカテゴリ別に色分けする実践的な方法をご紹介します。このテクニックを導入することで、グラフの視認性は劇的に向上し、伝えたい情報がより明確に、かつ迅速に伝わるようになります。
Excel棒グラフにおける「色分け」の重要性
「棒の色を変えればいいんじゃない?」そう思った方もいるかもしれません。もちろん、棒の色を変えるのも有効な手段です。棒の色を変更することでもデータの識別は可能ですが、プロットエリア(グラフの背景領域)を色分けすることには、以下に示すさらなる利点があります。
- 視覚的な区分けの明確化: 棒の色だけでなく、背景全体で領域を区分けすることで、カテゴリ間の境界がより明確に認識できます。これにより、データ分析の効率化やプレゼンテーション資料の説得力向上に寄与します。
- 情報のグループ化の促進: 複数の棒が単一のカテゴリに属していることを、視覚的に強力に示唆します。
- グラフ全体の美観向上: 単調なグラフに視覚的なアクセントが加わり、よりプロフェッショナルで洗練された印象を与えます。見やすいExcelグラフは、みなさまの資料作成スキルを一段と高めます。
プロットエリアを色分けする方法はいくつかありますが、今回は、最も汎用性が高く、かつ視覚的に優れた仕上がりを実現する「補助系列(背景の棒グラフ)を使用する方法」を紹介します。
Excel棒グラフの背景をカテゴリ別に色分けする手順
今回作成するグラフは、X軸に9つの要素があり、3つずつのカテゴリに色分けする例で見ていきます。この方法は、Excel 2016, 2019, 2021, Microsoft 365の各バージョンで対応可能です。
ステップ1:グラフ作成のためのデータ準備
これが一番の肝となります。通常のグラフデータに加えて、背景色を表現するための「補助データ」を作成します。

メインデータ
: グラフで表示したいメインデータです。背景1
,背景2
,背景3
: これらがカテゴリ別の色分けを制御する補助データです。- 各カテゴリに対応する行に、同じ値(例では100)を入力します。これによって、背景棒の高さを揃えることができます。
- 関係ないカテゴリの行は空欄にしておきます。ここに値が入っていると、意図しない場所に棒が表示されてしまいます。
ステップ2:棒グラフの基本作成と補助系列の追加設定
まずは通常の棒グラフを作成し、そこに先ほどの補助データを追加していきます。
要素
とメインデータ
を選択し、集合縦棒グラフを作成します。- グラフを選択した状態で、「グラフのデザイン」タブ > 「データの選択」をクリックします。
- 「凡例項目 (系列)」枠の「追加」をクリック。
- 「系列名」に「背景1」と入力。
- 「系列値」に「背景1」のデータ範囲(
$D$2:$D$10
のような形)を選択し、「OK」をクリック。
- 同様に、「背景2」と「背景3」も追加します。
ステップ3:補助系列の軸変更とデザイン調整
ここが最もテクニカルな部分です!追加した補助系列を、グラフの背景として機能するように設定します。
- グラフ上の「背景1」の棒をどれか一つ右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択します。
- 「系列のオプション」で、以下の設定を行います。
- 「系列をプロットする軸」を「第2軸」に設定。
- 「系列の重なり」を「100%」に設定。(重要!これで棒が完全に重なり合います)
- 「要素の間隔」を「0%」に設定。(これで棒の間に隙間がなくなり、一枚の色の帯のように見えます)
- 同じ手順で、「背景2」と「背景3」も同様に設定します。
- グラフ上の「背景1」の棒をどれか一つ選択した状態で「グラフのデザイン」タブ > 「グラフ種類の変更」をクリックします。
- 「背景1」のグラフの種類を「集合縦棒」から「100%積み上げ縦棒」に変更します。同時に「背景2」と「背景3」も「100%積み上げ縦棒」変更されます。
【ポイント】 要素の間隔
を0%にすることで、背景の棒がぴったりくっつき、一つの色の帯のように見えると同時に背景を「100%積み上げ縦棒」にすることにより主軸の値に合わせてプロットエリア全体に広がり、カテゴリを示す背景として機能します。
ステップ4:不要な第2軸の非表示と背景色の透明度設定
次に、表示を整えて背景を完成させます。
- グラフの右側に表示された第2Y軸(0%, 20%, 40%…と表示されている方)をクリックして選択します。
- 右クリックして「軸の書式設定」を選択。
- 「軸のオプション」の「ラベル」を展開し、「軸ラベル」を「なし」に設定します。
これで第2軸の目盛やラベルが非表示になります。 - 次に、グラフ上の「背景1」の棒をクリックして選択します。
- 「データ系列の書式設定」の「塗りつぶしと線」で、以下の設定を行います。
- 「塗りつぶし」を「塗りつぶし(単色)」に設定し、好きな色を選びます。
- 「透過性」を50%~70%程度に調整します。(これでメインの棒グラフが透けて見えるようになります)
- 「線」を「線なし」に設定します。(棒の周りの線が消えてより自然になります)
- 「背景2」「背景3」も同様に、それぞれ異なる色を設定し、透過性を調整します。
これで、グラフのプロットエリアがカテゴリごとに色分けされたはずです!
ステップ5:メインデータの棒を個別に色分けする
最後に、メインデータの棒を一本ずつ選択して色を変更します。ただし、背景の棒グラフの「系列の重なり」と「要素の間隔」を調整したことで、メインデータの棒が背景の裏に隠れてしまい、個別に選択しづらくなることがありますので次の手順で変更します。
- 背景の「系列の重なり」を一時的な調整する:まず、背景の棒グラフを選択し、右クリックして「データ系列の書式設定」を選びます。「系列のオプション」セクションで、「系列の重なり」の値を一時的に小さくします。 これにより、背景がメインデータの棒から少し離れるため、個々のメインデータ棒が視覚的に露出し、マウスでクリックできるようになります。
- メインデータの棒の選択と色変更する:背景を調整してメインデータの棒が見えるようになったら、変更したいメインデータの棒を一度クリックします。最初は同じ系列のすべての棒が選択されますが、もう一度、同じ棒をクリックすることで、その棒だけを個別に選択できます。 選択した状態で右クリックし、「データ要素の書式設定」を選択します。または、リボンメニューの「書式」タブから「図形の塗りつぶし」を使って色を変更します。これで、選択した棒の色が変更されます。
- 背景の「系列の重なり」を元に戻す:すべてのメインデータの棒の色変更が完了したら、再び背景の棒グラフを選択し、「データ系列の書式設定」を開きます。 「系列の重なり」を「100%」に戻します。これにより、背景が再び隙間なくプロットエリア全体に広がり、意図した通りのカテゴリ別色分けが再現されます。

まとめ:単調なExcelグラフからの脱却を!
本稿では、Excel棒グラフのプロットエリアをカテゴリ別に色分けする実践的な方法をご紹介しました。補助系列を活用したこのテクニックは、グラフの視認性を向上させ、データのグループ化を視覚的にサポートします。
この方法により、単調なグラフに視覚的なアクセントが加わり、より洗練された印象を与えることができるのではないでしょうか。ぜひ本記事で紹介した手順を参考に、あなたのExcelグラフをさらに効果的なものにしてみてください。