はじめに
AI動画生成ツールは急速に進化しており、個人や企業のクリエイティブ活動において新しい選択肢となっています。本記事では、無料で使える主なAI動画生成ツールを比較し、それぞれの特徴や使用方法、無料プランの制限などを紹介します。ご自身のプロジェクトに最も適したツールを選ぶための参考にしてください。
(本記事は、2024年10月現在の情報です。)
AI動画生成ツールの概要
AIを活用して動画を生成するツールは、短時間で高品質な動画を生成できるため、従来の映像制作プロセスを大きく変える力を持っています。特に、テキストベースのプロンプトを使用して映像を作り上げる技術は、広告業界やクリエイティブなプロジェクトにおいて非常に有用です。今回比較するツールは比較的容易に扱うことができる以下の3つです。
これらのツールで画像から動画を生成する際の比較を通じて、各ツールの強みや弱み、無料プランの制限、商用利用の可否など、さまざまな視点から評価するとともに、実際の生成例を紹介します。
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まず、各ツールを以下の観点で比較します。
- 初期クレジット数 無料トライアルで提供されるクレジット数。
- 生成制限 無料プランでの生成回数や動画長さの制限。
- 生成速度 動画生成にかかる時間。
- 動画解像度 生成される動画の解像度(サイズ)。
- フレーム率 動画のフレームレート。
- 商用利用の可否 商用利用が可能かどうか。
- 固定シード機能の有無 同じ結果を再現するための機能。
- 日本語プロンプトの対応 日本語でのプロンプト入力が可能か。
- 主な特徴 各ツールの独自の機能や強み。
以下は、主なAI動画生成ツールの比較表です。
項目 | KLING AI | Runway Gen-3 | Dream Machine |
---|---|---|---|
初期クレジット | 66クレジット/日 | 125クレジットのみ | 30クレジット(回)/月 |
生成制限 | 1日6回までの動画生成 | クレジットが無くなると生成不可 | 1日の回数制限あり |
生成速度 | 1週間程度 ※失敗することも多い | 10 秒の動画で約 90 秒 | 半日程度 |
動画解像度 | 横型:1280 × 720 縦型:720 × 1280 正方形:960 × 960 | 横型:1280 × 768 縦型:768 × 1280 | 横型:1280 × 768 縦型:768 × 1280 |
フレーム率 | 30フレーム/秒 | 24フレーム/秒 | 24フレーム/秒 |
商用利用 | 可 | 可 | 不可 |
固定シード機能 | なし | あり | なし |
日本語プロンプト | 可(英語推奨) | 可(英語推奨) | 可(英語推奨) |
主な特徴 | カメラコントロール機能によりカメラの制御方法を指定可能 画像生成から動画生成まで一連の操作が可能 | シード値を再利用して同様な結果を得ることが可能 画像生成から動画生成まで一連の操作が可能 | シンプルなインターフェースで操作が簡単 生成された5秒の動画をさらに5秒ずつ拡張可能 |
KLING AI
KLING AI は、3D時空間共同注意メカニズムを使って複雑な動きをモデル化し、大規模な動きのあるビデオを生成します。自社開発の技術により、現実の物理的特徴をシミュレートし、物理法則に従うビデオを作成できます。また、1080pの解像度で最大2分間の高品質な動画を作成します。複雑な動きやオブジェクト間の相互作用を描写するのが得意です。(公式サイトによる)
一方、無料プランでは1日に生成できる動画本数が6本に制限されていますが、現時点では、動画の生成に一週間程度かかることもあり、さらに生成に失敗するケースも多く見受けられるため、クレジットを有効に使うことは難しい状況です。また、固定シード値に関する設定がないため、同じプロンプトで同一の結果を再現することは困難です。
Runway Gen-3
Runway Gen-3は、忠実度、一貫性、モーションの点で大幅に改善された次世代の基礎モデルです。ビデオと画像を共同でトレーニングし、テキストからビデオ、画像からビデオ、テキストから画像への高速変換が可能です。高度なコントロールモードや安全対策を備え、フォトリアリスティックな人間キャラクターの生成に優れています。アーティストフレンドリーな設計で、エンターテイメントおよびメディア業界向けにカスタマイズも可能です。(公式サイトによる)
一方で、無料プランのクレジットが少なく、日や月ごとに追加で補充されません。5秒の動画で25クレジットを消費するため、5秒の動画を5つ生成するとその後は生成することができなくなります。また、KLING AI と同様に固定シード値に関する設定がないため、同じプロンプトで同一の結果を再現することは困難です。
Dream Machine
Dream Machineは、シンプルなUIで操作性が高く、初心者でも簡単に利用できるAI動画生成ツールです。テキストや画像からリアルで高品質な動画を迅速に生成し、120フレームを20秒で作成できます。5秒の動画を作成後、さらに5秒間拡張することができる機能を持ちます。また、物理的に正確なキャラクターの動きや一貫性を持ち、シネマティックなカメラワークも再現できます。これにより、より複雑でドラマティックな映像制作が可能です。(公式サイトによる)
一方で、シンプルなUIなだけに、他のツールに見られるような動画サイズの設定やカメラワーク、シードの利用などの機能は見られず、細かなカスタマイズは不足する可能性があります。また、無料版では商用利用が制限されており、商用プロジェクトに使用する場合は有料版へのアップグレードが必要です。
実際に生成した例
プロンプトに入力したテキストは、「She looks at the camera, blinks, and gently smiles warmly. Her hair is swaying in the gentle breeze.」といった簡単なものでした。
生成された動画は、どのツールのものも素人目には甲乙つけがたいですが、それぞれに特徴があります。
各ツールは、動きが加わる中で、指先の形状が乱れたり、顔の表情が変わり、別人のように見えたりする傾向があります。特に表情が変わる瞬間や指先の動きがあるシーンでの不自然さは、動画全体の品質に影響を与えます。
いくつかの動画を検証した結果、KLING AIは比較的キャラクターの一貫性が高く、表情の変化もスムーズで指先の動きも安定している印象を受けました。
Runway Gen-3では、体を大きく揺らすシーンが生成され、プロンプトではそのような指示はしていなかったため、生成された動きが想定外でした。
一方、Dream Machineの動画は動きが控えめで、全体的に落ち着いた雰囲気を持っています。特に最後の微笑は温かみのある魅力を放っています。
いずれのツールでも、元画像の精細さが結果に大きく影響するようです。元画像に違和感がある部分は、動画で強調されがちという印象を受けました。
驚いたのは、上記の例のRunway Gen-3で利用した元画像と同じものを使ってKLING AIで動画を生成したときです。顔の印象は変わり、目の形状は若干乱れましたが、7秒経過した時点で突然おどけた表情を見せました。プロンプトにはそのような指示がなかったため、ツールが意図しない動きを生成した点は興味深いものでした。
おわりに
本記事では、無料で利用できるAI動画生成ツールについて、KLING AI、Runway Gen-3、Dream Machineの3つを比較しました。それぞれのツールには独自の特徴がありますが、特に利用状況や制約に注意が必要です。
- KLING AIは、複雑な動きをモデル化できるものの、動画生成までに一週間以上かかることがあり、さらに生成失敗が多い点が大きな課題です。迅速にコンテンツを必要とするユーザーには不向きです。
- Runway Gen-3は、生成速度が速くフォトリアリスティックな表現に優れていますが、クレジットの制限が厳しく、すぐに動画生成ができなくなります。短期的なプロジェクトには向いていますが、継続的な使用には不安があります。
- Dream Machineは、シンプルなインターフェースで初心者でも扱いやすく、日常的に利用できる現時点(2024年10月)では最も有力な選択肢です。商用利用には有料版が必要ですが、比較的手軽に動画を生成できます。
今後、これらのツール又はここで紹介していない他のツールも含めて、さらなる進化が期待されます。AI技術の進展により、生成速度や品質の向上、新たな機能の追加が行われることと思います。例えば、リアルタイムでの動画生成や、より複雑なシナリオに対応したインタラクティブな動画制作が可能になると考えられます。また、ユーザーインターフェースの改善により、より多くの人々が簡単に利用できるようになることも期待されます。